マスターソンの自己愛性人格障害
マスターソンは、自己愛性人格障害は発達の停止であると考えています。
マスターソンの言うところの再接近期(生後約15〜22カ月)は、移動運動の習熟をもってはじまります。
子供の認識能力は発達し、情動生活が文化していくにしたがって、以前と違ってフラストレーション耐性も低下し、それと同時に母親の存在をいつも気にするようになります。
習熟が頂点に達すると、自己表象と対象表象との文化は次第に明確になっていきます。
それまで抱いていた誇大感と万能感を失い始め、また世界は自分が自由に利用できるものではなく、自力で対処しなければならないものであるということが、だんだんわかり始めます。
そのため、最接近期では分離不安が増大します。
この不安によって赤ちゃんは再び母親を求めます。
全ての点において母親が助けてくれることを求めますが、それはできないものであり、自己表象と対象表象とは盛んに分化していきます。
このようにして、幼児期の誇大と万能の幻想は、現実と調和するようになります。
しかし、自己愛性人格障害の人には、この再接近期が訪れません。
そのため、世界は自分が自由に利用できるものであり、自分中心に回っているという幻想が維持されます。