自己愛性人格障害の治療:抵抗と不安のスパイラル
自己愛性人格障害の治療では、退行を含む多くの治療への抵抗が現れます。
怒りや抑うつだけでなく、治療面接をすっぽかしたり、治療の中止を求める場合もあります。
これらはすべて、治療の進行を妨げるものなので、治療に対する抵抗の現れと考えられます。
しかし、多くの場合、患者は自分が抵抗を起こす原因を自覚できません。
怒りや抑うつなどをもっていることを自分で認めようとしないことさえあります。
治療者はこれらの抵抗が起こると、その抵抗の現れを患者に指摘し、患者自身でその原因や理由を考えるよう促します。
このように自分自身の問題に対して直面することを求める面接技法を、直面化といいます。
直面化によって、患者が自身の問題に気付き対処できるようになると、次の問題が発生します。
このまま問題が解決してしまうと、自分が見捨てられるのではないかと不安になります。
この見捨てられ不安は新たな治療への抵抗となるので、治療者はこの不安を解釈して治療的に働きかけます。
新たな働きかけは、患者の新たな抵抗を呼び起こすので、再び直面化が必要となります。
つまりは抵抗と不安のスパイラルになります。
このスパイラルの中で、治療で扱われる問題は徐々に深まり、治療者と患者の間には、しがみつきではなく、安定した信頼関係が形成されていきます。
治療者は患者の抵抗や見捨てられ不安に目を向けながら、治療を続け、徐々に治療の終結という患者との別離の準備をするよう進めていきます。