自己愛性人格障害の治療:直面化は治療が進んでから
自己愛性人格障害の治療の注意点として、直面化は治療が進んでから行うことが重要です。
自己愛性人格障害の人は、周囲から自己愛を傷つけられるような刺激を受けると、深く傷つき、怒りを示したり、抑うつ状態に陥りやすいという特徴が見られます。
自己愛を傷つけられないように、治療者に対しても自分がいかに特別で重要で、偉い人間であるか保証してくれるように、働きかけます。
自分の業績を自慢したり、人から高く評価された話を繰り返しします。
必要以上に謙遜して、治療者から逆に称揚される手法をとる患者もいます。
自分の重要さや偉さに関係のない話は軽視し、自分の自己愛を傷つけるような事実は無視します。
そのため、治療者は患者に対して、悩みや問題を明確に指摘する時点、すなわち直面化する時点を見極めなければなりません。
治療初期に、悩みや問題を指摘してしまうと、患者はその指摘を自分に対する非難や攻撃と受け取ります。
例えば、治療者が患者に対して、自己愛を傷つけるような働きかけを認めないことや、自分の能力を確かめる機会を避けていることなどを簡単に指摘しただけで、攻撃されたと受け取り、強い怒りを示したり、深く傷ついたりしてしまいます。
治療が進んで、患者が治療者に対して一定の信頼感を持ってからでないと、治療者からの指摘や説明は患者の心の中には届きません。
患者が治療者に信頼感を抱く基盤になるのが、治療者から患者に向けた共感です。