自己愛性人格障害の治療:自律と退行
自己愛性人格障害の治療の中で生じた怒りや抑うつを乗り越え、治療の成果が実を結び始めると、患者は自律的な生活を送れるようになります。
治療を開始したときに本人が訴えていた悩みはある程度解決され、落ち着いた日常生活が過ごせるようになります。
身近な人に対して怒りを感じていたとしても、現実的にその相手と関わることができるようになります。
しかし、治療が進展し、このまま治療が終わるかと家族や周囲の人々が思い始めた頃、揺り戻しがやってきます。
患者に不安が生じ、退行が現れます。
それまでに克服していたはずのいろいろな問題が再燃します。
怒りや抑うつが再び現れたり、治療者へのしがみつきが見られたりします。
退行では、今までできていたことなどが急にできなくなります。
子供っぽくなり周囲を困らせたり、手を焼かせます。
ただし、怒りや抑うつやしがみつきは、以前より穏やかなものであり、治療者がもてあますほどの深刻なものではありません。
治療過程で現れるこうした退行は、自律に対する患者の不安の反映であると考えられます。
患者が退行しても、周囲も本人も取り乱さずに、冷静に対処しましょう。
ゴールまであと一歩というところまで来ています。